時計は、手に取るだけでは伝わらない魅力があります。実際に腕に乗せた瞬間、光の移ろいや付け心地が呼び起こす感覚はその時計だけのものです。
このたび、シェルマンではスタッフが実際に腕に乗せて感じたことを中心としてお届けする新企画「Touch of Time ー時に触れてー」をスタートいたしました。第一回は、〈CZAPEK〉の「Antarctique Passage de Drake Glacier Blue」です。

 

 

 

20222月、新作として発表されると瞬く間にオーダーが殺到し、その2か月後にはCzapek社が新規オーダーを1年間ストップさせるほどとなった人気モデル、Antarctique Passage de Drake Glacier Blue。3年を経過し,ようやく店頭でご案内が可能になってまいりましたので改めてその魅力についてご案内したいと思います。

氷河を想起させる神秘-“Glacier Blue” ダイヤルの魔力

時計を見た瞬間、そのまなざしを一瞬で奪うダイヤル。それが「Czapek Antarctique Passage de Drake Glacier Blue」の最大の魅力と言っても過言ではありません。

この氷河をイメージしたアイスブルーのマットな輝きは、単なる色の演出ではなく、スイスの高名な文字盤メーカー(Métalem)によって精密に設計された構造美の結晶です。
表面には「Stairway to Eternity (永遠への階段)」と名付けられた独自のパターンが彫り込まれ、連続するトラペゾイド(台形)モチーフで構成された極めて複雑なギヨシェ装飾が施されています。ブルーの発色には透明度の高いPVDラッカーが幾層にも重ねられ、ギヨシェの凹凸が織りなす光と影が絶妙なコントラストを生み出します。

 

「一体型」の完成形-ブレスレットの造形と装着感

ラグジュアリースポーツウォッチにおけるブレスレットの完成度は、評価を大きく左右します。その点において、Czapekの一体型ステンレスブレスレットは現行の市場において、最も洗練されたもののひとつと断言できます。

固定リンクは斜めに切り落とされた台形状の構成となっており、面の取り方も一様ではなく、鏡面とヘアラインの異なる仕上げが巧みに織り交ぜられています。これにより、腕の動きに合わせて複雑な光の変化が生まれ、実に官能的な表情を見せてくれます。

しかも、ただ美しいだけではありません。リンクの厚みや間隔、可動性は徹底的に計算されており、腕なじみは驚くほど自然。コマの角がどこにも当たらないように滑らかに処理されているため、長時間の装着でもストレスを感じません。さらに、クイックチェンジ機構によってラバー(もしくはカーフ)ストラップへの交換も簡単。使用シーンに合わせた柔軟な対応力も見逃せません。

 

ディテールを極める──インデックスと針の立体感

ダイヤルの中で見逃されがちですが、時計の完成度を決定づけるのはインデックスと針の作り込みです。Czapekのこのモデルでは、インデックスは単なるバーではなく、多面カットが施された立体的な造形で構成されています。それぞれの面が異なる角度で仕上げられており、光を受けた瞬間にまるで宝石のような輝きを放ちます。

さらに注目すべきは、針の根元に施された微細な造形変化や、センターセコンドの流麗な動きと全体の視認性を高める絶妙なバランス設計です。ルーペで覗いたときでさえ破綻がなく、むしろ新たな発見がある──それはハイエンドウォッチにおいてさえ非常に稀なことです。

Czapek見えない部分にこそ魂を込めるブランドであることを、これらのディテールが雄弁に物語っています。

 

本当の劇場は裏側にある-キャリバーSXH5の仕上げの高み

Czapekの真価が最も発揮されるのは、その裏側──自社開発のムーブメント「Calibre SXH5」にあります。

このムーブメントの魅力は、スペックだけでは語り尽くせません。パーツひとつひとつに至るまで、徹底した手仕上げの美意識が注がれています。

たとえば、肉抜きされたブリッジに丁寧な面取りが施されている点。エッジ部分は全て手作業で仕上げられており、光をまとったような滑らかな輝きを放ちます。これは構造的な合理性と審美性を高次元で両立させた証です。

さらに、2番車の受けにはブラックポリッシュ仕上げが施されており、その一点の曇りもない艶やかな光沢は、思わず息をのむような美しさです。

これらの仕上げは、単なる視覚的な演出にとどまらず、他社のラグジュアリースポーツウォッチとは一線を画す芸術としてのムーブメントというCzapekの哲学を如実に体現しています。「量産の論理を超えた個の力」──それがSXH5から伝わってきます。

 

なぜ、この時計をすすめるのか

市場には魅力的なステンレススポーツウォッチがあふれていますが、その多くは「ブランドバリュー」や「投資性」で選ばれているものも少なくありません。しかし、〈Czapek Antarctique Passage de Drake Glacier Blue〉は、それらとは一線を画します。

他にはない詩的な美しさを宿しながらも、実用性・快適性・耐久性のすべてを兼ね備えている。そしてなにより、あらゆる細部に作り手の意志が感じられる──それが、この時計を推薦する最大の理由です。

時計を「道具以上のもの」として愛する方、そして美と構造に対して鋭敏な感性を持つ方にとって、このモデルは間違いなく「所有する喜び」に応えてくれる一本です。

 

製品仕様

  • ケース径:40.5mm
  • ケース厚:10.6mm
  • ケース素材:ステンレススチール
  • ムーブメント:Cal. SXH5.01(自動巻)
  • パワーリザーブ:約60時間
  • 防水性能:120m
  • ブレスレット:ステンレススチール製、一体型・クイックチェンジ対応
  • 附属ストラップ:ラバーストラップまたはカーフストラップ(カラー選択可)
  • 風防:サファイアクリスタル(両面無反射コーティング)
  • 製造国:スイス
  • 価格:4,290,000円(税込)※2025年8月現在
シェルマンオフィシャルサイト

1971年にアンティークショップとして創業したシェルマンは、パテック・フィリップをはじめとしたアンティークウォッチの名品の数々や美術工芸品ともいえるアンティークジュエリーを中心に展開してまいりました。
そして現在は、大手メゾンに属さず時計づくりに励む独立時計師のユニークな作品、独自の信念やこだわりを持って製作される現行ブランドの時計、複雑機構を搭載したクォーツ式のオリジナルウォッチの開発・製作など、アンティークの枠を越え、時代や流行を越えて受け継がれる名品をコンセプトに、幅広いジャンルの作品を取り扱っています