(記事を開いた瞬間、目に飛び込んでくるのは、漆黒の宇宙空間を思わせるスタイリッシュなグラフィック。CVDKの文字盤でゆっくりと自転する「青い地球」、アーミン・シュトロームの精緻な「共振(レゾナンス)」のギミック、そしてルイ・モネが宿す「本物の隕石(メテオライト)」。これらインディペンデントの傑作たちが、まるで星座の光の線で美しく結ばれているような、息を呑むほどミステリアスで美しいビジュアルからスタートします)

皆様、こんにちは。 あるいは、お仕事の合間に、こっそり画面をスクロールしてくださっている皆様は、お疲れ様です。シェルマンでございます。さて、突然ですが、皆様は今日、スマートフォンをどのくらいの時間触っていらっしゃいましたか?「そんなの、いちいち計っていないよ」という声が聞こえてきそうですが、ある調査によりますと、現代人はスマートフォンを1日に平均で4.5時間も使用しているそうです。朝起きて画面をスワイプし、歩きながらメッセージを返し、指示を出し、そして今この瞬間も、皆様と私は、スマートフォンという「情報端末(Information Terminal)」を通じて繋がっています。

本当に、便利ですよね、スマートフォン。 これ1台あれば、1秒の狂いもない正確な時間がわかり、世界中のニュースが読めて、好きな音楽が聴けて、大切な人の顔を見て話すこともできる。 まさに、人類のイノベーションが到達した「効率と利便性の頂点」です。ですが、ここで、少しだけへそ曲がりな疑問を、皆様の前に置いてみたいのです。

これほどまでに便利で、1秒も狂わない機械がポケットに入っているというのに、なぜ私たちは今、わざわざ何百万、時には何千万というお金を払って、手で巻かなければ1日で止まってしまうような、あいまいで、複雑で、おまけに少し重たい「機械式時計」を腕に巻こうとするのでしょうか?

「それはステータスだからだよ」「デザインがかっこいいからね」 もちろん、おっしゃる通りです。そのブランドへの愛や、身につけた時の高揚感。それは、大人の人生を豊かにしてくれる、何にも代えがたい素晴らしい価値観です。ただ、機械式時計という世界の、さらに底の方を覗き込んでみますと、そこには、私たちの日常を少しだけロマンチックに変えてくれる、「もう一つのあたたかな理由」が隠されているようなのです。

今日は、10月に訪れる「特別な3日間」の予告とともに、皆様を少しだけ、知的な時間旅行へとご案内いたします。

▍10月10日、世界が「10時10分」で繋がる日

皆様は、時計の針が「10時10分」を指した姿をご覧になったとき、どう思われますか? 「ああ、よくある時計の宣伝写真だね」と思われるかもしれません。実は、あの「10時10分」という角度。文字盤のロゴが最も美しく見え、時針と分針が最も完璧なバランスで調和する、時計界における「黄金の角度」とされているのです。

その10時10分にちなみまして、来たる10月10日は、世界中の時計愛好家や時計師たちが一緒にお祝いをする特別な世界的祭典、「World Watch Day(ワールド・ウォッチ・デー)」となっております。時計製造の文化は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている、人類の偉大な芸術なんですね。 (WWD公式HP: https://www.worldwatchday.org/en/home

そして、このお祝いの日に合わせまして、私たちシェルマンは、特別な企画をご用意いたしました。

オランダが世界に誇る究極の天文時計メゾン、「クリスティアン・ヴァン・デル・クラーウ(CVDK)」のCEOであり、現代の天才時計師であるピム・コースラグ(Pim Koeslag)氏が、はるばる日本へ特別来日することが決定いたしました!

ピム氏が、オランダから抱えて持ってくるのは、今年の春、世界的な時計見本市「W&W(ウォッチズ&ワンダーズ)」で発表され、世界の愛好家たちの度肝を抜いた最新作『ヴィーナス(金星)』のプロトタイプです。

この『ヴィーナス』、何が凄いかと言いますと、時計の文字盤の中に、本物の宇宙、それも金星、地球、月を、太陽を中心にリアルタイムで表示するという超複雑な機構が、美しいブルーのアベンチュリンガラス(まるで星空のようにきらめくガラスです)の上に再現されているのです。

この宇宙のロマン(宇宙の運行ルール/物理法則)を、実際に皆様にその目で見て、五感で「かっこいい!」「美しい!」と感じていただくために、以下の3日間、特別なイベントを開催いたします。

  • 10月10日(土): 大阪・阪神梅田本店
  • 10月11日(日): 名古屋・名古屋栄三越 ※CVDKのみ
  • 10月12日(月): 東京・日本橋三越本店

まだ、具体的な中身については、あえて「日付だけ」お伝えして、詳細は曖昧にしておきます。 テレビドラマの予告編のように、楽しみは少しずつ紐解いていくのが、一番ワクワクしますからね。

 

▍情報端末(Information Terminal)が「記録」なら、時計は「記憶のスイッチ」

今回、会場には、CVDKだけでなく、スイスの物理を追求したブランド「アーミン・シュトローム」や、宇宙の破片である隕石を文字盤に宿した「ルイ・モネ」、そしてドイツの質実剛健を絵に描いたような「ヴェンペ」など、時計師たちの執念が詰まった名作たちが一堂に会します。

どれも一目見た瞬間に、「うわあ、なんてかっこいいんだ……!」と言葉を失うような、圧倒的なオーラを持った時計ばかりです。その美しさに惹かれて、彼らのストーリーを知ったとき。 皆様の日常に、ちょっとした「知」的な変化が起きるかもしれません。

かつて、大切な瞬間を切り取るには「ライカなどの重たいカメラ」が必要でした。音楽を聴くには「レコード盤」に慎重に針を落とす必要がありました。映画を見るには、映写機がカタカタと回る暗闇の部屋に行く必要がありました。 どれも、五感を使って、道具の重みを感じる、愛おしいアナログな体験でした。

90年代にはそのすべてがアナログからデジタルに進化し、今、そのすべては、スマートフォンという情報端末(Information Terminal)に吸い込まれ、完璧なデジタルデータとして、自動的に「記録(レコード)」されるようになりました。けれど、完璧すぎるデータに囲まれているからこそ、私たちは時々、あの「あいまいで、あたたかい記憶(メモリー)」を恋しく思うのではないでしょうか。

ゼンマイを巻き、腕元でチクタクと鼓動を打つ機械式時計。 これは、スマートフォンのように「正確な1秒を記録する道具」ではありません。

ふと文字盤に目を落とし、手にするたびに、 「ああ、この時計を選んだあの日は、こんな風に風が気持ちよかったな」 「この時計を着けて臨んだあの商談、緊張したけれど、いい結果になったな」 「あのとき、隣にいた人の手が、とてもあたたかかったな」

そんな、客観的なデータには決して残らない、あなただけの美しい思い出を呼び覚ます、「あたたかな記憶のスイッチ」なのです。

時計が持つ普遍的な美しさと、皆様自身の人生の物語が重なったとき、その時計は世界にたった一つの、あなただけの宝物(未来のアンティーク)になります。

▍次回予告:すべては、宇宙を真似ることから始まった。

10月のイベントに向けて、毎週のように、皆様を「時と宇宙をめぐる知的な時間旅行」へとお連れいたします。

最初にお話しするテーマは、今から約700年前、1300年代の中世ヨーロッパ。 実は、人類が最初に作った時計は、腕に巻くものでも、机に置くものでもありませんでした。 それは、街を見下ろす教会の「塔時計」であり、そして、神が創り出した宇宙の運行をそのまま地上に再現しようとした、巨大な「宇宙を模した機械」だったのです。

なぜ、当時の人々は、時間を知るためではなく、「宇宙を再現するため」に、命がけで歯車を削り出したのか?

次回、【第1話:時の起源 ── 塔時計や天文時計から、リビングの美しき小宇宙へ】

少し、オタクっぽくて、でも最高にロマンチックな天文学と機械式時計のお話を、丁寧にお届けしたいと思います。 どうぞ、お楽しみに。シェルマンでした。

 

シェルマンオフィシャルサイト

1971年にアンティークショップとして創業したシェルマンは、パテック・フィリップをはじめとしたアンティークウォッチの名品の数々や美術工芸品ともいえるアンティークジュエリーを中心に展開してまいりました。
そして現在は、大手メゾンに属さず時計づくりに励む独立時計師のユニークな作品、独自の信念やこだわりを持って製作される現行ブランドの時計、複雑機構を搭載したクォーツ式のオリジナルウォッチの開発・製作など、アンティークの枠を越え、時代や流行を越えて受け継がれる名品をコンセプトに、幅広いジャンルの作品を取り扱っています