
時計の文字盤には、時に言葉を失うほどの「華」と「色気」を宿す作品が存在します。特に、ムーブメントの精緻な構造をあえて文字盤側に露出させる「オープンワーク」の技法は、機械式時計の本質を直接覗き込むような、知的な視覚的悦びを私たちに与えてくれます。
世界中の時計愛好家から支持を集め、現在ここ日本において特別にご案内できる極めて希少なマスターピース、CZAPEK(チャペック)の「コンプリシテ・スターダスト・コバルト(Complicité Stardust Cobalt)」。世界限定わずか13本というこの作品は、ひと目見た瞬間に心を深く惹きつける圧倒的な引力を持っています。
深い煌めきを放つスターダスト・コバルトの文字盤を舞台に、7時半と4時半の位置でそれぞれ独立して力強く鼓動する「2つの脱進機」。そして、その2つの動きを12時位置で束ねる「ディファレンシャルギア」。サファイアクリスタルのブリッジを通して浮き上がるように配置された、極限まで磨き上げられたパーツ群は、まさに手首の上で展開される「キネティック・アート(動く彫刻)」です。
しかし、この息を呑むような美しいオープンワークのレイアウトは、決して奇をてらったデザインの産物ではありません。その奥底には、機械式時計が抱える永遠の課題、「ISOCHRONISM(等時性)」を極めるための、時計師たちの執念と美しい友情が隠されています。





「等時性」とは、ゼンマイの巻き上げ量や時計の姿勢にかかわらず、常に一定のリズムで時を刻むという、機械式時計の究極の理想です。この難題に挑むため、CZAPEKは「脱進機のマスター」として世界的な権威を持つ独立時計師、ベルンハルト・レデラー(Bernhard Lederer)氏と協業しました。CEOのザビエル氏とレデラー氏は、実は子供が同じ学校に通っていたという偶然の出会いから意気投合し、互いの知見を惜しみなく共有し合う「共鳴(コンプリシテ)」によってこの複雑機構を生み出したのです。
彼らは等時性という至高のゴールへ向け、5つの高度なアプローチをこの小さなケースの中に注ぎ込みました。
① 動力:ひとつの香箱(バレル)から生み出されたエネルギーを、ディファレンシャルギアを介して2つの輪列へ均等に分配します。
② 伝達:独立した2つのギアトレインによって、エネルギーロスのない極めて効率的な力の伝達を実現。
③ 心臓部(ディファレンシャルギアの魔法):自動車がカーブを曲がる際、左右の車輪の回転差を吸収する仕組みをご存知でしょうか。時計におけるディファレンシャル(差動)ギアもそれに似た働きをします。独立して動く2つのテンワ(ダブルエスケープメント)から生み出される「微妙に異なるリズム」を、12時位置のギアが受け止めて平均化することで、極めて正確で安定した一つの時間を導き出しているのです。
④ 外乱対策:着用時の姿勢差や重力による微細な誤差を、2つの脱進機が互いに補い合い相殺する構造。
⑤ 人の手:どれほど理論が完璧でも、最終的な精度を決めるのは職人の手による微調整です。レデラー氏の知見と、最高峰の職人たちの手仕事による極限のチューニングが、この機構に命を吹き込みます。
これら5つの高度なアプローチが、文字盤側で美しく駆動する芸術へと見事に昇華されているのです。

1840年代の歴史的遺産を受け継ぎ、2015年に現代へと復活を遂げてから約10年。CZAPEKは、時計業界において驚異的なスピードでトップティアへと駆け上がりました。歴史あるビッグメゾンが途方もない時間とトライ&エラーを繰り返して到達する領域へ、彼らはごく短期間で達したのです。
その原動力は、CEOであるザビエル氏の情熱と、常に顧客(レア・パートナー)の声に真摯に耳を傾け、細部のアップデートを迅速かつ実直に繰り返す姿勢に他なりません。
スイス伝統の「水平分業」をオープンに実践し、最高の専門家たちと知見を共有し合うからこそ、彼らはこの極致に達することができました。華やかなクリエイションの裏には、ひたむきで泥臭いほどの時計作りへの愛情が存在しています。
ブランド復活から10年という、奇跡のような大きな節目を迎えたCZAPEK。 彼らが大切にしている哲学に「WE COLLECT RARE PEOPLE(私たちは、時計を愛する特別な仲間と出会う。)」という言葉があります。CZAPEKの時計を所有することは、単なる消費ではありません。時計師たちと直接語り合い、その熱狂を共有し、共にブランドの歴史を創り上げていく「レア・パートナー」のコミュニティへ参加することを意味します。

この8月には、CEOのザビエル氏が来日し、日本のレア・パートナーと共に10周年を祝う特別なトークイベントを開催いたします。そこでは、新開発の自社製キャリバーを搭載した記念碑的モデル「タイムジャンパー(Time Jumper)」、未来へ向けた新たなマスターピースも披露される予定です。
その熱狂のプロローグとして、まずはこの「コンプリシテ・スターダスト・コバルト」の実力を、実際に店頭のルーペ越しに覗き込んでみませんか。
AIやデジタルが時間を効率的・定量的に管理する(クロノス)現代において、職人たちが途方もない時間をかけて導き出した「等時性への究極の解」は、私たちに豊かな時間の意味(カイロス)を教えてくれます。ブランドの記号としてではなく、この時計の奥底にある「地道な努力と狂気的な品質」、そして時計師たちの美しいハーモニーを心から理解し、大切にしていただける方に、この最後の一本をお届けしたいと願っております。

【主要スペック】
Place Vendôme Complicité Stardust Cobalt
- 限定数: 世界限定13本
- ケース素材: 18Kホワイトゴールド
- ケースサイズ: 直径 41.8mm
- 文字盤: スターダスト・コバルト(オープンワーク・ダイヤル)、サファイアクリスタル・ブリッジ
- ムーブメント: 手巻きキャリバーNo.8(ベルンハルト・レデラー氏との共同開発)
- 機構: ダブルエスケープメント(2つの独立した脱進機)、12時位置のディファレンシャルギアによる等時性の追求
- パワーリザーブ: 約72時間
- 防水性能: 50m防水
- ストラップ: アリゲーターストラップ(18Kホワイトゴールド製フォールディングバックル)
¥22,000,000(税込)

