2025年は、クリスティアン・ホイヘンスによる「ひげゼンマイ」発明350周年の記念すべき年です。この節目に、彼の系譜を継ぐ「独立時計師とスモールメゾン」の皆様に、作品への哲学や想いを綴った「直筆レター」を添えていただきました。こちらでは、各ブランドの手紙の詳細をご紹介させていただきます。


直筆レター 日本語訳 ▶

親愛なる時計愛好家の皆さまへ

クリスティアン・ホイヘンスが“時間に鼓動を与えて”から、すでに三世紀半が経ちました。私はこの発明が、今もなお機械式時計のひとつひとつの鼓動の中で静かに響き続けていることに、深い感銘を覚えています。

私のモデル《Origine(オリジン)》は、まさにその精神へのオマージュとして構想されました。その設計には、時計づくりの原点──純粋な機構、均整のとれた比率、そして動きの 美──へ立ち返りたいという私の想いが込められています。すべてのパーツは手で作られ、手で調整されます。それは精度を追求するためだけではなく、この時計に“生きた魂”を吹き込むためでもあります。《オリジン》は、進化と伝統が対立するものではなく、むしろ寄り添い合う“伴侶”であることを静かに思い出させてくれる存在です。

未来の《オリジン》の守り手となるあなたへ──
その鼓動が、あなたの思索に寄り添い、静寂のひとときを刻み、時間とは「測るもの」ではなく「感じるもの」なのだと、思い出させてくれますように。その律動の中に、ホイヘンスの残響、この時計を形づくった職人たちの手のぬくもり、そして、あなた自身の旅の“ひとしずく”を感じていただけますように。

あたたかな敬意と情熱をこめて。
シルヴァン・ピノー

ORIGINE

手巻き(Cal. Origine)
パワーリザーブ:約55時間
ケース径:40.0mm
ケース:ステンレススティール
防水性: 3気圧防水
機能:時・分表示、スモールセコンド


SYLVAIN PINAUD(シルヴァン・ピノー)氏は、フランス出身の独立時計師であり、2018年にスイスのサント・クロワに自身の工房を開き、独立時計師としての活動を本格的に開始しました。彼の父も時計師であり、彼は幼い頃からこの技術に親しみ、フランスのモルトー時計学校で学びました。卒業後、彼はフランク・ミュラーで 複雑機構の専門知識を深め、また、歴史的な傑作の修復を手掛けるアトリエで、 ブレゲなどの伝説的な時計師の作品に触れることで、高度な修復技術と歴史的知識を培いました。その後、カール F. ブヘラで開発・試作に携わるなど、多岐にわたる経験を積んでいます。

独立後の2022年には、シンプルな三針モデル「Origine(オリジン)」で、時計界のオスカーとも呼ばれるジュネーブ時計グランプリ(GPHG)の「Horological Revelation Prize(時計部門の啓示賞)」を受賞し、その卓越した技術と独自の美学が世界的に認められました。

作品には、「職人技」「忍耐」「厳格さ」「永続性」という彼が大切にする価値観が込められています。彼の時計は、デザイン、ムーブメントの設計から製造、装飾に至るまで、一貫して彼自身のビジョンを反映しており、特に手作業による芸術的な仕上げと、細部にまでこだわった革新的なムーブメント構造が特徴です。大量生産とは一線を画した、真にパーソナルで、芸術と科学が交差する、誠実で高品質な時計作りを実践しています。年間10~12本程度の極めて少量生産。オーダー待ちが数年になることもあります。

 

シェルマンオフィシャルサイト

1971年にアンティークショップとして創業したシェルマンは、パテック・フィリップをはじめとしたアンティークウォッチの名品の数々や美術工芸品ともいえるアンティークジュエリーを中心に展開してまいりました。
そして現在は、大手メゾンに属さず時計づくりに励む独立時計師のユニークな作品、独自の信念やこだわりを持って製作される現行ブランドの時計、複雑機構を搭載したクォーツ式のオリジナルウォッチの開発・製作など、アンティークの枠を越え、時代や流行を越えて受け継がれる名品をコンセプトに、幅広いジャンルの作品を取り扱っています