2025年は、クリスティアン・ホイヘンスによる「ひげゼンマイ」発明350周年の記念すべき年です。この節目に、彼の系譜を継ぐ「独立時計師とスモールメゾン」の皆様に、作品への哲学や想いを綴った「直筆レター」を添えていただきました。こちらでは、各ブランドの手紙の詳細をご紹介させていただきます。

直筆レター 日本語訳 ▶
親愛なる時計愛好家の皆さまへ
クリスティアン・ホイヘンスによる「ひげゼンマイ」の発明は、人類の歴史における大きな転換点でした。それは単に時計そのものの精度を高めただけではなく、私たち人間の「時間との関わり方」──ひいては「互いとの関わり方」までも変えたのです。
私たちの〈30CP〉は、この“時を測る”という人類の営みを、より永く、より美しく受け継ぐための、ささやかな挑戦のひとつです。その中心には、もうひとつの小さな発明があります。それは、ルビー製の微調整ボールを用いた独自のレギュレーター機構。 ホイヘンスが何世紀も前に考案したひげゼンマイを、より繊細に、よりやさしく調整するための仕組みです。
この時計を手にする未来のオーナーが、そこに込められた夢と情熱、そして、それをつくった者の手と、これから時を刻むあなたとの間に結ばれた 静かな絆を感じてくださることを願っています。
敬具

30CP
手巻き(Cal.30CP)
パワーリザーブ:約42時間
ケース径:38.0mm
ケース:18Kゴールド
防水性: 3気圧防水
世界限定:50本
デンマークのコペンハーゲンを拠点とする独立時計師メーカー。大規模な製造を行う企業ではなく、自身の名を冠したアトリエで、極めて高度な技術を用いた時計を少量生産しています。
クリスチャン・ラス氏は、独立する前にスイス・ジュネーブの名門「パテック・フィリップミュージアム」に所属。彼はそこでマスター・ウォッチメーカーとして、歴史的に貴重な複雑時計やアンティークウォッチの修復・管理を担当していました。この経験が、彼の現在の時計作りに多大な影響を与えています。
彼の作品は、単なる流行やデザイン性を追うものではなく、20世紀初頭から中頃にかけて製造された「天文台クロノメーター」(特に高精度を追求した時計)への深い敬意とオマージュが込められています。
2020年に発表された彼の名を一躍有名にしたモデルが「30CP」ですが、デザインや機構は、ヴィンテージのクロノメーターが持つ独特の美学や、ロービートで大きなテンプを持つ古典的な設計を、現代の技術で再解釈しています。ムーブメントの部品一つひとつに施される手作業の仕上げは、パテック・フィリップでの経験に裏打ちされた最高水準のものです。
彼の時計は「メーカー」が大量生産する製品とは対極にあり、一人の職人がその技術と哲学のすべてを注ぎ込んだ「作品」として扱われています。
