時計の針が刻むのは、単なる時刻ではなく作り手の魂です。
今回『Dear Watch Lover,』にて初めて詳細をご案内する Sylvain Pinaud(シルヴァン・ピノー)は、まさにその魂を静かに、しかし極めて雄弁に語るフランス出身の独立時計師です。

私たちシェルマンが長年見つめてきた「未来のアンティーク」の系譜において、彼の作品は特別な位置を占めています。これまでご紹介してきたAtelier de Chronométrie (AdC) や Christian Lass の作品群と同様の深みを持ち、将来的には歴史的レジェンドたちと肩を並べるであろう、稀有な才能です。


■ 創造する職人、その手跡
現代の時計界において、設計、製造、仕上げ、調整を自らの手で完結させる“創造する職人”は決して多くありません。 シルヴァン・ピノーの作品には、スイス・ラ・ショー・ド・フォンの厳格な精密性と、フランス特有の気品ある美意識が同居しています。大量生産の波に抗うように「人の手による究極の完成度」を追求する彼の時計は、単なる実用品の枠を超え、身につけることのできる「Objet d’Art(芸術作品)」として存在しています。

「時計は単なる機械ではない。見る人の感性を刺激し、人生の質を豊かにする“存在”であってほしい」

彼が語るこの哲学は、自己表現をひけらかすものではなく、見る人の心を静かに震わせる美の探求から生まれています。



■ 原点にして象徴 ― 代表作「ORIGINE」
彼の代表作「ORIGINE(オリジン)」は、その名の通り、時計の本質である「精度」「構造美」「思想」を最も純粋な形で再構築した作品です。
この独創性は世界的な評価を受け、2022年の GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)では見事「時計の革新賞」を受賞しました。

ORIGINEの最大の魅力は、精密さと構造美を両立させた独自の設計にあります。通常は裏側に隠される緻密な機構を、あえて正面から鑑賞できる構造は、機械そのものをアートとして楽しむ喜びを与えてくれます。 面取り、ポリッシュ、装飾、その微細な細部のすべてに一切の妥協がなく、手仕事の極致とも言える仕上げが施されています。そこにあるのは「道具」でありながら「芸術品」でもあるという、美しい矛盾の調和です。



■ シェルマンの美意識との共鳴
今回ご紹介する「ORIGINE」には、特別な仕様が施されています。 ムーブメントの素材に、あえてジャーマン・シルバー(洋銀)が採用されているのです。この柔らかな光沢と温かみのある深い質感は、私たちシェルマンが理想とする「質素にして華麗」な美意識と、ピノー氏の時計哲学が深く共鳴した証でもあります。華美な装飾に頼るのではなく、素材そのものが持つ品格と手仕事の痕跡だけで美しさを成立させる、極めて知的な選択と言えます。


■ 未来のヴィンテージを腕に
シルヴァン・ピノーが目指すのは、技術のスペックを大声で競う時計ではなく、時を美しく生きるための時計です。 機械式時計の未来を、創造と感性の融合点として提示するその姿勢こそ、今の時代が求める本質そのものではないでしょうか。

「寡黙にして饒舌」多くを語らずとも、その圧倒的な質と存在感がすべてを物語るシルヴァン・ピノーの作品。時代を超える「未来のヴィンテージ」が放つ静かなる声に、ぜひ一度、耳を傾けてみてください。

シェルマンオフィシャルサイト

1971年にアンティークショップとして創業したシェルマンは、パテック・フィリップをはじめとしたアンティークウォッチの名品の数々や美術工芸品ともいえるアンティークジュエリーを中心に展開してまいりました。
そして現在は、大手メゾンに属さず時計づくりに励む独立時計師のユニークな作品、独自の信念やこだわりを持って製作される現行ブランドの時計、複雑機構を搭載したクォーツ式のオリジナルウォッチの開発・製作など、アンティークの枠を越え、時代や流行を越えて受け継がれる名品をコンセプトに、幅広いジャンルの作品を取り扱っています