昨年、11月に行われたGPHGで、「KUDOKE3 Salmon」が2度目の部門賞を受賞したことで、その名声をさらに高めた〈クドケ〉。さらに今年の新作「KUDOKE5」を発表するなど、彼のアイディアは底をつくことがありません。

 2007年に創業した〈クドケ〉ですが、当時は自社ムーブメント搭載の「ハンドヴェルク」コレクションはまだ存在していなく、主に汎用ムーブメントのUnitas 6498をベースとした「クンストヴェルク」コレクションのみでした。ドイツ語で‟アートワーク”の意味をもつ、このコレクションは彫金師としての腕前も一流のクドケの匠の技が、ある意味余すところなく生かされた作品であると個人的には感じています。

独創的なタコのモチーフと手彫りの美学

彼の時計は、単なる時間を示す道具である時計という概念を超え、芸術作品としての風格を見せます。そして、特にその傾向が如実に表された作品、それがこの「クドクトパス」です。「クンストヴェルク」コレクションの代表作と言っても過言ではないこの作品は、〈クドケ〉が持つ独特な世界観が時計全体に表現されています。とく「タコ」という生き物を時計にしようという発想が既にユニークです。文字盤上にうねり広がるタコの足は、吸盤一つひとつ彫り起こされ、まるで生きているかのように躍動感があります。

ほぼ一人で成し遂げる時計製造

〈クドケ〉の時計は、その製作過程にも類稀なるこだわりが詰まっています。デザインの考案から始まり、ムーブメントの肉抜き、各パーツの仕上げ、メッキ、そして彫金に至るまで、その全てをクドケ氏がほぼ一人で手掛けています。構想から完成までを一貫して一人で成立させることができる時計師は、非常に稀有な存在。彼の時計には、その一つ一つに職人の魂と情熱が宿っています。メッキの工程だけでも、タコの胴体はローズゴールドメッキ、吸盤はホワイトロジウムメッキ、その他のムーブメント部分はブラックロジウムメッキが施されるなど、3色の電気メッキを使分けており、これにより奥行きと立体感を生み出しています。

表裏一体の美しさ:ムーブメントとエングレービングの共演

クドクトパスの魅力は、文字盤だけに留まりません。時計の裏側、シースルーバックからは、そのベースムーブメントであるUnitas6498を見ることができます。ここにもタコの足のようにスケルトン化されたプレートやブリッジが配置されており、ムーブメントの動きと繊細なエングレーブの両方を同時に楽しむことができます。

ステファン・クドケ氏の卓越した職人技と創造性が凝縮された逸品。ぜひ、実際にお手に取ってご覧いただき、その魅力を肌で感じてみてください。

 

 

KudOktopus

ムーブメント: 手巻き(Unitas6498
パワーリザーブ: 約46時間
振動数 : 18,000 VpH(3Hz)
ケース素材:ステンレス・スティール
ケースサイズ: 41.0mm(径)、9.3mm(厚)


価格: 1,870,000円(税込) ※2025年6現在

 

シェルマンオフィシャルサイト

1971年にアンティークショップとして創業したシェルマンは、パテック・フィリップをはじめとしたアンティークウォッチの名品の数々や美術工芸品ともいえるアンティークジュエリーを中心に展開してまいりました。
そして現在は、大手メゾンに属さず時計づくりに励む独立時計師のユニークな作品、独自の信念やこだわりを持って製作される現行ブランドの時計、複雑機構を搭載したクォーツ式のオリジナルウォッチの開発・製作など、アンティークの枠を越え、時代や流行を越えて受け継がれる名品をコンセプトに、幅広いジャンルの作品を取り扱っています