1980年代の機械式時計復興期から今日に至るまで、独自の道を歩み続ける希有なブランド「CHRONOSWISS(クロノスイス)」。創業者ゲルト・R・ラング氏が築き上げた「古典への情熱」を基盤に、現在のオーナーであるオリバー・エブシュタイン氏が提示する「モダン・メカニカル」への転換、そして変わらぬブランドの真髄について紐解いていきます。
ゲルト・R・ラング時代:機械式時計の「守護者」と遺した功績
1983年、クォーツショックの嵐が吹き荒れる中で誕生したクロノスイスは、ドイツのミュンヘンで産声を上げました。創業者ゲルト・R・ラング氏は、単なる時計師ではなく、機械式時計の美学を次世代に繋ぐ「伝道師」であり、熱狂的な時計コレクターでもありました。昔からクロノスイスを知っている方は、もしかするとラング氏の”赤いセルフレームの眼鏡“が彼のアイデンティティとして印象に残っているのではないでしょうか。

この時代のブランドを象徴するのは「日常に使える現代のヴィンテージ・ウォッチ」という考え方であり、ラング氏は過去の着想を大切にしながら、職人気質が強く反映されたタイムピースを世に送り出しました。
知る人は少ないですが、彼が時計界に残した功績は極めて大きく、特に1987年に発表された「レギュレーター」は、かつて時計工房の標準時計として使われていた機構を腕時計に落とし込んだもので、当時の時計界に衝撃を与えました。また、今では当たり前となった「裏蓋からムーブメントを鑑賞する」楽しみ、すなわちシースルーバックの普及にいち早く貢献したのもラング氏です。
さらに、オニオンリューズ、コインエッジベゼル、ネジ留め式のラグといった、ひと目でクロノスイスと分かる象徴的なデザインコードもこの時期に確立されました。
オリバー・エブシュタイン時代:伝統を「モダン」へと昇華させる
2012年、経営のバトンはスイス人の実業家であり時計愛好家でもあったオリバー・エブシュタイン氏へと託されました。ブランドは拠点をスイスのルツェルンに移し、ラング氏の築いた基盤の上に「現代的な視覚的インパクト」を融合させる新たな挑戦が始まりました。
新生クロノスイスが掲げた「モダン・メカニカル」への進化は、多層構造の立体的な文字盤によってメカニズムを視覚的に楽しませるデザインへと結実しています。
「フライング・レギュレーター」や「オープンギア」、「スペースタイマー」に見られるように、文字盤に奥行きを持たせ、CVDコーティングによる鮮やかなブルーやパープルといった大胆な色彩を採用したことは、ブランドの大きな変化と言えると思います。
また、創業40周年を迎えた2023年には、1996年に発表されたラング時代の名作「デルフィス」をモダンにアップデートして復活させるなど、過去の遺産を現代の感性で磨き上げる取り組みも行われています。
2025年、同じく過去の名作「デジター」も「ネオ デジター(Neo Digiteur)」としてアップデートして復活し、話題を呼びました。

アトリエ・ルツェルンで継承される「手仕事」と技法
非常に興味深いのは、見た目がモダンになればなるほど、クロノスイスが「手仕事」へのこだわりを強めている点です。ルツェルンのアトリエでは、今もなお歴史的な手動機械を用いた「ハンド・ギョーシェ」が施されており、職人の技が脈々と息づいています。
古典的なギョーシェ彫りをあえて現代的な配色で彩るという大胆な挑戦は、クラフトマンシップとテクノロジーが高度に融合している現在のクロノスイスを象徴する技法です。
シェルマンが考える、クロノスイスの愉しみ方
経営者や拠点が代わっても、クロノスイスが40年以上守り続けているポリシーに、私どもシェルマンは共感しています。創業以来、クォーツ時計を一切作らず機械式のみに専念する姿勢や、修理技術者の視点で作られたメンテナンス性の高い構造という哲学は、エブシュタイン氏の時代になっても固く守られています。
オニオンリューズやコインエッジといったラング氏が生み出したアイコンを継承しながら、その「器」の中にある表現を現代的にアップデートする姿勢こそが、このブランドのアイデンティティです。
かつてのクロノスイスが「伝統の継承」であったなら、現在の彼らは過去の技術を使って未来の時計を作る「伝統の再定義」を行っています。もしあなたが、伝統的な技法を尊重しながらも、人とは違う個性を主張したいと願うなら、現在のクロノスイスは最高の選択肢となるはずです。1983年から続く「機械式時計への情熱」が刻まれたタイムピースを、ぜひその目でご覧ください。
【お問い合わせ先】
■シェルマン日本橋三越店
会期:2026年3月4日(水)~3月31日(火)
会場:日本橋三越本店 本館6階ウォッチギャラリー/cal.BAR
TEL: 03-6225-2134
■シェルマン伊勢丹新宿店
会期:2026年3月4日(水)~3月31日(火)
会場:伊勢丹新宿店本館5階 ウォッチ/ クロノスイス
TEL: 03-3352-1111 大代表
■シェルマン銀座三越店
会期:2026年3月4日(水)~3月31日(火)
会場:銀座三越本館6階 シェルマン
TEL:03-6228-6911
