(漆黒の闇に無数の星々がきらめく、深いブルーアベンチュリンの文字盤。その中央で誇らしげに輝く太陽のモチーフの周囲を、ゴールドの金星、青い地球、そして小さな月が、静かに、狂いなく公転している。ルーペで極限まで迫ると、サファイアケースバックの奥で、星型のブリッジと太陽を象ったスケルトンローターが優美に回転する、CVDK最新作『ヴィーナス・ゾディアック』の息を呑むほど美しいシネマティック映像からスタートします)

皆様、こんにちは。シェルマンでございます。

秋風が心地よく吹き抜け、夜空を見上げると、ひときわ眩い光を放つ星々に思わず目を奪われる季節となってまいりました。10月の特別なイベントに向けた知的な時間旅行、いよいよ本日は、連載のクライマックスとなる第6話をお届けいたします。

さて、本日の旅を照らす水先案内星は、夜空の中で太陽と月に次いで最も明るく、神秘的な輝きを放つ星「金星(Venus)」です。

ギリシャ・ローマ神話において、美と愛を司る女神「アフロディーテ(ヴィーナス)」の名を冠するこの星。古くから「明けの明星」「宵の明星」として人類に親しまれてきた金星ですが、実は、時計の歴史、そして近代科学の歴史の扉をこじ開けた「決定的な主役」でもありました。

1610年、あのガリレオ・ガリレイが手製の望遠鏡を夜空に向けたとき、彼は金星が月と同じように「満ち欠け」をし、さらにその見かけの大きさが劇的に変化していることを発見します。「もし地球が宇宙の中心(天動説)なら、金星がこんな満ち欠けをするはずがない。太陽を中心に、地球も金星も回っているのだ(地動説)!」 金星の美しき光の満ち欠けこそが、人類に宇宙の本当の姿を教える決定打となったのです。(※そしてこの劇的な地動説の証明こそが、のちに歴史に名高いあの「ガリレオ裁判」へと繋がっていくことになるのですが……それはまた別のお話です。)

そして2026年の今秋。 この「美と天文学の原点」とも言える金星をテーマにした、世界の時計界の度肝を抜く最高峰の傑作が、オランダからここ日本へ、【日本初公開】として奇跡の上陸を果たすこととなりました!

▍若干20代で世界を震撼させた、現代の天才ピム・コースラグ

その奇跡のタイムピースをご紹介する前に、どうしても皆様にお話ししておかなければならない一人の男がおります。オランダが世界に誇る天文時計メゾン『クリスティアン・ヴァン・デル・クラーウ(CVDK)』の現CEOであり、マスターウォッチメーカーである、ピム・コースラグ(Pim Koeslag)氏です。

時計界において、ピム氏の名前はまさに「生きる伝説」として知られています。15歳で時計製作の世界に飛び込んだ彼は、オランダの名門時計学校を首席で卒業後、スイス・ジュネーヴの最高峰マニュファクチュールへ。驚くべきことに、彼は若干20代半ばにして、スイスの一流グループにおける複雑ムーブメント(トゥールビヨン、ミニッツリピーター、自社製マニュファクチュール・クロノグラフなど)の開発責任者として、時計界の最前線を牽引する存在となったのです。

まさに「天才」の名をほしいままにしたピム氏。しかし、そんな彼が自らの人生のすべてを捧げる場所として選んだのは、巨大資本のスイスブランドではなく、自らの祖国オランダの小さな、しかし世界で唯一無二の天文時計メゾン『CVDK』でした。

「ホイヘンスやアイジンガーが築き上げた、オランダの偉大なる天文学の魂。この『宇宙の美しさを腕時計に宿す』という哲学を、現代最高峰の技術で次の50年へと受け継ぐことこそ、私の生涯の使命である」

そう決意したピム氏は、創業50周年を迎えたCVDKの舵を取り、ブランド初となる完全自社開発ムーブメント『CKM-01』を完成させました。そして、その最高峰の心臓部に、彼が持てるすべての知性と情熱を注ぎ込んで開発した新機構「ヴィーナス・モジュール」をドッキングさせた最新作こそ、本日ご紹介する『ヴィーナス(Venus)』なのです!

▍宇宙が描く「黄金比」の軌跡 ── 「5」という数字とローズ・オブ・ヴィーナス

今回、日本初公開となる『ヴィーナス』の文字盤を見つめていると、そこには天文学が秘めた「息を呑むほど美しい数学的調和」が封じ込められていることに気づかされます。皆様は、地球と金星が太陽の周りを回る軌道に、ある「奇跡の幾何学模様」が隠されているのをご存じでしょうか。

地球が太陽を1周するのに要する時間は約365.2日。対して、金星が太陽を1周する時間は約224.7日。この2つの惑星の公転周期の比率は、自然界の調和を表すフィボナッチ数列の数字、「約 8 対 13」という驚くべき比率に収束します。

【フィボナッチ数列とは?】 12〜13世紀の中世イタリア・ピサの数学者レオナルド・フィボナッチが西洋に広めた数列。「1, 1, 2, 3, 5, 8, 13…」のように、前の2つの数を足すと次の数になる法則で、植物の花びらや種子の配列、貝殻の螺旋など、自然界が最も無理なく美しい形をつくるときに現れることで知られます。

陸上のトラックを思い浮かべてみてください。外側を走る地球が8年かけて太陽のトラックを8周する間に、内側を走る足の速い金星はきっかり13周走ります。このとき、金星が地球を追い抜く回数は、「13周 − 8周 = 5回」。 つまり、8年間のあいだにちょうど5回、太陽・金星・地球が宇宙空間で一直線に並ぶ「最接近(会合)」の瞬間が訪れます。

  • 地球の8年(約2,920日) ÷ 5回 = 約584日

日数にして約584日に一度。この5回の最接近ポイントを宇宙のキャンバスの上で順番に線で結んでいくと……なんとそこには、花びらを広げた一輪の美しい薔薇、『五芒星(ローズ・オブ・ヴィーナス)』が完璧な対称性を持って浮かび上がるのです! さらに神秘的なことに、この五芒星のすべての交点は、人間が直感的に最も美しいと感じるプロポーション、「黄金比(1 : 1.618...)」の調和となって現れます。自然界そのものが、最初から「究極の幾何学美」を描きながら回っている。そして驚くべきことに、この約584日に一度訪れる「太陽・金星・地球が一直線に並ぶ瞬間(直近では10月24日前後)」が、まさにこの『ヴィーナス』の文字盤の上で、リアルタイムな位置関係としてひと目で確認できるよう設計されているのです!

実は、日本初のプラネタリウムの聖地である「大阪市立科学館」にも、これにまつわる大変ユニークなエピソードがございます。科学館の学芸員さんが、この「金星と地球が8年で描く花びらのような公転軌道の美しさ」に深く魅せられ、その軌道図をそのままデザインにしたオリジナルの『公転周期Tシャツ』を制作・販売されているのです。「遠い宇宙の惑星の動きが、どうしてこんなにも完璧な幾何学模様を生み出すのか?」という問いを通じて、人々の科学への知的好奇心を刺激するこの試み。

オランダの天才時計師が腕時計の上で表現した至高の哲学と、日本の科学館の学芸員さんがTシャツに込めた星空への情熱。 表現の形は違えど、どちらも同じ「宇宙が描く不変の美」に魂を揺さぶられた人々の、あたたかな知の共鳴と言えるのではないでしょうか。

ピム・コースラグ氏は、この宇宙の美神が織りなす神秘の軌道を、わずか直径38ミリの腕時計『ヴィーナス』の上でリアルタイムに再現して見せたのです。

▍日本初公開:選べる2つの美学 ── 「占星術」のロマンか、「天文学」の知性か

今回、オランダからピム氏自身が日本へ直接抱えて持ってくる『ヴィーナス』には、まったく異なるアプローチで宇宙を表現した2つの傑作モデルが存在します。わかりやすく分けるならば、【占星術(運命と星空のロマン)】を纏うか、【天文学(科学と計算の知性)】を腕にするか、という贅沢な選択です。

① 『ヴィーナス・ゾディアック(The Venus Zodiac)』 = 【占星術のロマン】 夜空の深淵を閉じ込めたかのような、神秘的なブルーアベンチュリン(砂金石ガラス)文字盤モデル。 文字盤の外周には、太陽が現在運行している黄道十二宮(星座/ゾディアック)がエレガントに表示されます。 特筆すべきは、中央の太陽を取り囲む4枚のディスク構造です。金星、地球、そして月が、本物の宇宙と全く同じ速度でリアルタイムに公転し、太陽・月・地球の3次元的な幾何学配置によって「新月」や「満月」のメカニズムを視覚的に楽しむことができます。古来、星々の動きに自らの運命を重ね合わせた「占星術」の詩的な世界観を、まるで腕元にきらめく星空の彫刻のように抱くことができる芸術的モデルです。

② 『ヴィーナス・アニュアルカレンダー(The Venus Annual Calendar)』 = 【天文学の知性】 光の粒子が放射状に広がる、極めてノーブルなシルバーサンレイ文字盤モデル。 こちらは、17世紀以降の近代科学が切り拓いた「天文学」の数理と計器の美を極めた、極めてテクニカルな知性派モデルです。外周のレイルトラック上には大小の月を自動判別するアニュアルカレンダー(年次カレンダー)を搭載し、閏年(4年に一度)以外は手動の日付修正を必要としません。 さらに文字盤上には、「地球の公転速度(約107,206 km/h)」「金星の公転速度(約126,071 km/h)」といった実際の天文学的数値が緻密にレタリングされており、計器としての知的な佇まいが男心を激しくくすぐります。

どちらのモデルも、ケース径は腕元への収まりが完璧な「38mm」。素材は端正なステンレススティール、または華やかな18Kローズゴールドからお選びいただけます。 そしてサファイアクリスタルの裏蓋を覗き込めば、ピム氏の手作業による美しい面取りが施された星型ブリッジと、CVDKの象徴である太陽のスケルトンローターが、優雅に時を刻む姿をご堪能いただけます。

▍一生モノの小宇宙を、あなたの腕元へ ── 特別受注のご案内

皆様、今回10月のイベントで皆様の目の前に現れる『ヴィーナス』は、単なるカタログの新作写真ではありません。ピム・コースラグ氏が自らのアトリエで組み上げ、調整を重ねた、世界に先駆けて日本へと運ばれる「正真正銘の実機(プロトタイプ)」です。

写真や言葉だけでは決して伝えきれない、アベンチュリンの深い奥行き、サンレイの繊細な陰影、そしてルーペ越しに息づく歯車の完璧なフィニッシュ。これらを、実際に皆様ご自身の五感で確かめ、その場でピム氏と直接言葉を交わしながら、ご自身のための一本としてオーダー(受注)いただけるという、一生に一度レベルの特別な機会をご用意いたしました。

スマートフォンを見れば、誰でも等しく「無機質なデジタルデータ(記録)」が手に入る時代。 だからこそ、45億年前から宇宙に刻まれている「美神の軌跡」を自らの腕元に宿し、人生の愛おしい時間を刻んでいくこと。

それこそが、流行に消費されることのない、あなたとご家族の歴史を語り継ぐ「未来のアンティーク」を手にするということなのです。

 

 

 

▍次回予告:最終話 ── 10月、奇跡の3日間へ

全6話にわたってお届けしてきた、時と宇宙をめぐる知的な時間旅行。 中世の塔時計から始まり、等時性の追求、海洋実用の極致、そして宇宙を宿す天文時計の神髄へ。 すべての物語の点と線が、いよいよ来たる10月の特別な3日間へと収束いたします。

次回、【最終話】時を巻くホモ・サピエンス ── 記憶を宿す、3日間の奇跡の扉が開く

10月10日(大阪・阪神梅田本店)、10月11日(名古屋・名古屋栄三越)、10月12日(東京・日本橋三越本店)。 それぞれの会場で皆様をお迎えする特別な空間の全貌と、この秋、皆様にお届けしたい「最高の体験」のすべてを語り尽くします。

どうぞ、最後までお付き合いくださいませ。

シェルマンでした。

シェルマンオフィシャルサイト

1971年にアンティークショップとして創業したシェルマンは、パテック・フィリップをはじめとしたアンティークウォッチの名品の数々や美術工芸品ともいえるアンティークジュエリーを中心に展開してまいりました。
そして現在は、大手メゾンに属さず時計づくりに励む独立時計師のユニークな作品、独自の信念やこだわりを持って製作される現行ブランドの時計、複雑機構を搭載したクォーツ式のオリジナルウォッチの開発・製作など、アンティークの枠を越え、時代や流行を越えて受け継がれる名品をコンセプトに、幅広いジャンルの作品を取り扱っています